アイデア(英語idea)

 「考え。思いつき。発想」


 ギリシア語のイデアidea「観念」から。プラトンの理想主義的哲学のイデア論では「現象界の彼岸である

イデア界に存在する理想」。


 アイドル(英語idol)

 「憧れの的。偶像」


 ギリシア語のエイドスeidos「形」から。アリストテレスの現実主義的哲学では「現象界や現実の物その物に

存在する理想」。

 cf.ギリシア語のエイドロンは「彫像」。


 アカデミック(英語academic)

 「学究的な。官学的な」、「研究態度が実利的でないさま」


 ギリシア語のアカデメイアakademia(プラトンが作った哲学の学園の名。アカデモスの森に建てられたこと

による。アカデモスはギリシア神話の英雄の名でアッチカにその墓がある)からフランス語のacademique

「アカデミーの」へ。


 アカペラ(イタリア語a cappella)

 「礼拝堂風に」(原義)、「無伴奏での合唱(の様式)」(広義)


 中世のカトリック教会における2大典礼である、ミサ(聖なる肉と血の拝領<聖体・聖血拝受>を中心とした、

最後の晩餐の再現)と聖務日課(聖書を朗読と祈祷<お祈り>を中心とした勤行<お勤め>)の際に、必ず

歌われたグレゴリオ聖歌の歌われ方が、礼拝堂で無伴奏だったことから

 狭義では、ルネサンス期の作曲家パレストリーナ(16世紀、イタリア)が代表の教会合唱の様式。

 cf.グレゴリオ聖歌の名称は、実質的な初代ローマ教皇とされるグレゴリウス1世(540頃〜604)の名前に

  由来する。彼は、コンスタンティノープル教会に対して、ローマ教会の首位を主張するとともに、ゲルマン人

  への布教に努めた「大教皇」で知られる。全630曲以上のグレゴリオ聖歌を集成したとされる。


 アキレス腱(英語Achilles tendon)

 「両足首後ろの腱」、「(唯一の)弱点」


 ギリシア神話の英雄アキレウスから。

 cf.トロヤ戦争を謳ったホメロスの『イリアス』に現れ、唯一不死身でなかったこれを射られて死んだ。


 アトム(英語atom)

 「原子」


 ギリシア語のアトモスatomos

 「分割できないもの(アは否定を示し、トモスは「分けられる」の意)」から。

 cf.古代ギリシアの自然哲学者デモクリトスが「万物の根源」とした。

   近代科学では分割できる概念となった。


 アパルトヘイト(オランダ語apartheid)

 「(ポルトガル→オランダ→イギリスと支配者が交替していった南アフリカ。

  その南アフリカ共和国で20世紀末まで行われた極端な人種隔離政策。起源はイギリスがオランダ系移民

  の子孫であるブール人(ボーア人)に黒人支配を認めて分割統治したことにある)」


 オランダ語アパルト「隔離した」と名詞語尾のヘイトの構成で「隔離」の意。


 ア・ラ・カルト(フランス語a la carte)

 「一品料理。献立表から一品ずつ選んで注文するお好み料理」


 「献立表により」の意。カルトは「献立表。トランプのカード」の意で、ギリシア語のカーテスkhartes

パピルス紙」から。英語のカードcardと同系。


  アルファベット(英語alphabet)

  「字母。いろは。ABC」


 ギリシア語の最初のαとβを合わせ読んだもの。

 alphaは、ギリシア字母の原形とされるフェニキア文字の第1字エルフeleph「雄牛」、ヘブライ文字の

第1字アレフalephに由来し、雄牛の頭の象形文字から。betaは、ヘブライ文字の第2字beth「家」に基づく。


 アンモナイト(英語ammonite)

 「(古生代デボン紀から中生代に栄えた化石軟体動物で、巻き貝のような殻をもつ。アンモン貝)」


 古代エジプトのアメン(Amen)神についているヤギの角に似ているのでラテン語でcorn Ammonis

「アモンの角」と名付けられた。アメン神は多産と生命を象徴するテーベ地方の羊頭の神であった。エジプト

王朝統一により最高神ラーと合体して太陽の神アメン=ラーと呼ばれた。この化石は、アンモナイト=ニッポ

ニテスとして日本でも発見される。


 アンモニア(オランダ語ammonia)

 「窒素と水素の化合物。刺激が強い無色の気体。硝酸や化学肥料を製造し、冷凍や製氷に使う。」


 ラテン語sal ammoniacum「アンモンの塩」(リビアのアンモン神殿の近くに産する塩化アンモニウム)から、

アンモン(アメン)は古代エジプトの太陽神


 インテリ(ロシア語intelligentstija)

 「知識階級。知識人」
 

 ラテン語のintelligentia「洞察力。理解力」に基づく、ドイツ語inllogent「知識・教養の豊かな。理解力

のある」から。

 cf.帝政ロシアの19世紀後半、インテリゲンツィアを中心としたナロード=ニキ運動が高揚した。


 エッセー(英語essay)

 「随筆。随想」


 古代フランス語essaier(現代フランス語essayer)「試みる」から。

 cf.フランス=ルネサンスの人文学者モンテーニュの『エセー(随想録)』が有名。


 
 エディプス(ギリシア語の『オイディプス Oedipus』で、

              ソフォクレスによる古代ギリシア悲劇
の代表作)


 父を殺し母を妻としたギリシア神話の人物。心理学の「エディプス・コンプレックス」のcomplexは

 「入り組んだ」の意。ラテン語complexusから。com−「共に」plectere「織る」の構成。

 エニシダ(オランダ語genst)

 「(ある草花の名前)」


 江戸時代に渡来し、蘭学書にはエニスタと記される。エニシダと変化したのは、エニシとシダの語音を

連想したためか。あるいは、スペイン語でイエニスタhiniestaで、それが、エニスダとなったという説もある。

 cf.イギリスのプランタジネット王朝の「プランタジネット」はアンジュー家の紋章にあるエニシダのこと。


 エピキュリアン(英語epicurean)

 「快楽主義者。享楽主義者」


 ギリシアのヘレニズム時代の哲学者エピクロスの名前に基づく。彼は正しい認識に基づく個人の精神的

快楽を説いたのに、後世では単に感性的肉体的快楽を追及する享楽主義的個人主義者を指すようになった。


 オー・デ・コロン(フランス語eau de Cologne)

 「香水。化粧水として用いる、アルコールを加えたもの」


 フランス語オー・ド・コローニュは「ケルン(ドイツの都市名。ゴシック式の教会で有名)の水」の意味。

ケルン(Koln)で1725年にイタリア人によって作られた。


 オリエンテーション(英語orientation)

 「方向づけ。進路指導。新人教育。仕事や学習などを始めるに先立って行う説明会」
 

 ラテン語oriens「昇りつつある」に基づく、orientate「東向きにする」から。

 cf.orient「東方」と同系。古代にエジプト・メソポタミア文明や栄え、アッシリア帝国・アケメネス朝ペルシア

  が統一した地域。


 オリンピック(英語olympic)

 「(国際的な各種スポーツ競技大会)」


 ギリシアの地名オリンピアOlympiaから。

 cf.古代ギリシアのオリンピア競技会は、ギリシア人の同民族意識(=「ヘレネス意識」)を示すものの一つ。


  外来日本語の語源で学ぶ世界史用語集 index へ戻る